本多 寛さん 四段審査小論文20201220

「けがをしない・させない合気道」

合気道の特徴は、「①徒手対徒手の他に武器対徒手 ②多人数を相手にすること ③左右表裏を交互に行うこと ④お互いに気を合わせ、勝ち負けがないこと」などがあげられます。 試合・勝負がないことから、高齢者からでも始めることができ、指導・稽古により「けがをしない・させない」合気道が可能になります。

 「けがをしない・させない合気道」をモットーに指導されていた、「合気道木蓮の会」を立ち上げにかかわった縁で、201710月から指導を引き継ぎお手伝いすることになりました。護身術講座などの、一般市民・未経験者を対象にしたものや、日々稽古している人たちへどう伝えられるか、その人の技量では何を教えるのが適しているか、正しいのかと思いながら指導しているところです。

 合気道は、武道であり体操スポーツとは、違い「礼の仕方、立ち方、座り方」などの礼儀作法から始まり、体を柔らかく・強く・動きよくするための準備運動、入身・転換・転身等(円転の理)の体さばきや、受け身や基本技の稽古により、心身を鍛え己を高めるものと考えております。 体さばき、受け身、基本技についても、最初は頭で理解して、動きを学ぶことになりますが、何度も反復継続して、自ら考え試行しながら稽古をすることで、頭でなく体が自然に動くようになり、さらに全体が広く見られ相手と一体となって技がかけられるようになってくるものです。

 「けがをしない合気道」としては、入り身・転換・転身等の体さばきと、受け身や準備運動が重要と思っています。 体さばきができることで、道場に限らず日常生活においても、衝突が避けられ、けがを防ぐことや、相手から逃げることも可能です。 

準備運動で手首を柔らかく・強くしておくことや、受け身が取れることで、転んでも、仮に手をついても、大けがにならずにけがをしないか、けがを小さくすることが可能です。 しかし、「けがをしない・させない合気道」は、武道として投げ技・固め技をしている以上、難しいところがあります。 取りと受けの関係や周りの人たちの技と位置の関係など、思わる接触が発生したり関節を痛めたりすることがあります。

 取りと受けの関係では、取りは力わざではない、ぶつからない技が大事で、相手に合わせて、崩し導き技をかけること、水平垂直の動きでなく、円のように丸い動き、いわゆる「円転の理」で丹田からの体の動きに足・手と気が一体の球体運動で、さばける必要があります。

まず、「ぶつからない」方向とは、物理や力学でいうところの、支点・力点・作用点を思い浮かべ、ベクトルの方向に合わせた方向への技が必要であり、崩し導くには、体の向き・足の運び・気の流れ・手・ひじ・腕の使い方、心身統一の状態と複合的な作用になります。 この時に、相手の状態に合わせられるか、自由に動く部分はどこか、無理のない正しい距離と方向か、丹田を中心にした体の動きができているかが重要であり、手先の技にならず、体が先で手・足・気が一体になっているのかを確認していくことが必要であります。また、受けは、相手に柔らかく付いていき、相手に近い脚は即座に閉じられるように、四方投げなどでは肘と耳を離さないなど、技に応じた受けが必要です。 取りも相手を制御しながら、崩し固める場合でも、例えば相手の肘の位置と体の関係など、本来崩れる方向に崩し、けがをさせないことが重要であります。

さらに、他の稽古をしている人との接触事故を防ぐには、道場全体の中で、相手や周りの人たちの状況も、見て感じられることが必要であり、そのためには、稽古をしている人たち皆が、肉体とともに心の余裕と充実により、全体を俯瞰しながら行動できるようになることかと思います。 まず、自分自身が全体に目が配られるようになり、その場と一体になるため、姿勢と目付、体軸、丹田からの動きに注意しながら稽古に励んでいきたいと思っています。 2020年は、新型コロナの影響で、稽古の休止、対人的になるべく触れない稽古や、マスクの着用稽古により休憩回数を増やし、そのたびごとの消毒など、新型コロナ対策を実施しての稽古の他に、「気」を意識した稽古や、DVD等のない時代の資料を基にした、「流気図」「運足図」「道歌」「道文」の解説、剣杖でのソーシャルディスタンスの確保など、稽古の方法を見直す機会となりました。

新型コロナと伴に暮らす時代となり、基礎体力の減少を抑え、細心の注意を図りながら日々の生活を充実させることが重要となっています。 高齢者からでも始められる合気道をさらに、広めるためにも、健康で安全安心でき、力を入れずに、いかに自分の腕や体の重さを利用し、手足が一体に動く時のモーメント力の大きさや、円転の理・呼吸力を大事にするとともに、ディテールの部分も疎かにせず、今後も「けがをしない・させない合気道」に努めていきたいと思っています。


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